MoviePassは、圧倒的低価格で顧客数を増やす戦略が空回りした事例だ。同社が格安料金を導入したのは2017年の8月。ここで発表されたプランは、月額9.95ドルで提携映画館にて毎日1本の映画を鑑賞できるという破格プランだ。当時の映画1本の通常料金は11.5ドルであったことから、このプランの破格ぶりがわかる。
それまでMoviePassの料金は、月当たりの視聴回数に応じて月額約15〜50ドルのプランを提供しており、ユーザー数も20万人付近で横ばいをたどっていた。ところが、この値引きをきっかけにユーザーの急増が始まった。翌年2018年6月にはユーザー数は300万人を超えた。
しかし、ユーザーの急拡大に手持ちのキャッシュが追いつかず、資金繰りの問題が深刻化し始めたのもこの頃だ。キャッシュ不足により2018年7月にはサービスを一時停止、その翌月にはサービス内容を改定(改悪)し、同額料金で映画館の利用回数は3回/月までとなった。破格プランを目当てに集まった顧客たちはいっせいに離脱していった。2019年4月時点のユーザー数は、ピーク時から90%減の22.5万人に大幅縮小。奇しくも、破格プラン導入前の水準にきれいに戻った格好だ。
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