AIをロボット工学に適用するにはふたつの主要なアプローチがある。
そのひとつがハイブリッドアプローチだ。システムのさまざまなパーツがAIによって動き、従来型のプログラミングによってひとつにまとめられている。このアプローチを導入した視覚サブシステムは、目に見える世界をAIを利用して認識・分類するだろう。視覚サブシステムが見える物体のリストを作成し、ロボットプログラムはリストを受け取り、コードに実装されたヒューリスティック[先入観や経験に基づいて、ある程度正解に近い答えを導き出す思考法]を用いてそれに基づいた行動をする。リンゴをテーブルから取るためのプログラムが書かれると、AI視覚システムによりリンゴが検知され、プログラムはリストの「タイプ:リンゴ」に該当するものを見分け、従来型のロボット制御ソフトを使って手を伸ばし、それを取る。
もうひとつのアプローチであるエンドツーエンド学習(e2e)は、「ある物体を取る」などのタスク全体、あるいは「テーブルを片づける」のようなより範囲の広い動作を学習するための手法だ。学習は、ロボットを膨大な量の訓練データにさらすことで生じる。人間が身体を使うタスクのやり方を学ぶときとほぼ同じである。幼い子どもにカップを手に取らせようとする場合、年齢にもよるが、子どもはまずカップとは何かを学び、さらには液体が入っているかもしれないカップで遊んでいたら、ひっくり返したり大量のミルクをこぼしたりすることがあると繰り返し学習しなければならない。だが、人がやっているところを見て、それを真似し、遊びながら何度も練習するうちに、子どもはやり方を身につけ、最後には手順を考える必要さえなくなる。
わたしはやがて、ラリーはあのとき、結局はエンドツーエンドタスクを実行する方法をロボットが学習できることを実証しない限り、どうにもならないと言っていたのだと思うようになった。それができて初めて、ムーンショットと呼ばれるにふさわしく、乱雑で予測不可能な現実世界で確実にタスクをこなすロボットの製造に本当に挑戦できるのだろう。
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