「動物愛護の本質は人間憎悪」と、その思考回路について解説する。
「行き過ぎた動物愛護の根底には、動物への愛だけではなく、人間不信や人間憎悪があります。人間は利己的で、金儲けのために環境破壊したり動物を殺したりしていると思い込む反面、動物はピュアで神聖な存在として理想化・神格化する。人間不信が動物愛護に至る理由は、動物たちが言葉を持たないから。人間社会で批判されたり、誰も自分のことを理解してくれないという環境でも、動物だけは自分のことを分かってくれて、否定せず寄り添ってくれるはずだというファンタジーに走ってしまうんです。
実際には動物が何を考えているかなんて分からないし、餌がもらえるから懐くという本能に根ざした行動かもしれません。しかし、猫は甘えん坊、クマは優しいなど、まるでおとぎ話ように人間と同じような感情や喜怒哀楽があるものだと擬人化して、そこに感情移入してしまう。実生活でうまくいっていない、心に何らかの傷を抱えている人ほど、過度な動物愛護に陥りやすい側面はあると思います」
「一言でいうと、かわいいからです。モフモフした手触り、ずんぐりとした体型、子育ての習慣や、立ち上がった際のユーモラスな姿も擬人化されやすい。現実のヒグマやツキノワグマは恐ろしいものですが、テディベアやプーさんなど、古今東西、多くの国でデフォルメされたキャラクターがいます。
この『かわいい』という価値が、とりわけ日本では大きな意味を持ちます。議論によるコミュニケーションよりも同調圧力を重視する日本文化の中では、成熟したものは怖い、未成熟なものほどかわいい、優れているという価値観が強い。環境問題に根差した欧米のアニマルライツ活動とは少し異なり、日本の動物愛護ではかわいいことがすごく重要。理屈よりも『あんなかわいいものが殺されるなんて』という感情が先に来るわけです」