虚淵氏:
とくに強烈な印象が残っているのは、大塚明夫さんですね。「イスカンダルはこう言わないと思う」と、ご自身が完全にキャラクターと同化されたうえで、セリフの違和感について指摘を受けたことがありました。ですが、それこそが舞台の本質だと思います。役者と演出家が対話しながらキャラクターを構築していくスタイルですね。
こちらとしても「たしかにこのキャラクターならこうは言わないな」と納得できれば、台本は柔軟に変更します。そのときも大塚さんの提案通りに変更しましたが、結果としてそのほうが格段によくなりました。
小岩井さん:
素敵ですね……! 現場のスタイルはさまざまで、虚淵さんのように柔軟に受け入れてくださる方もいれば、台本の変更は受け付けないという方もいます。ですから役者側としては、たとえ台本に少し不自然な言い回しがあっても「これには何か意図があるはずだ。このセリフを成立させる演技アプローチを探そう」と思考する場合もあります。みなさん、現場に合わせて多様なアプローチをされていますね。
虚淵氏:
結局のところ、観客は台本を読むのではなく、声優の演技が乗った「声」を聴いて作品を受け取ります。つまり、演技まで含めて初めてキャラクターになる。その演技のプロが「言い回しを変えたほうが自然だ」と言うのであれば、それが正解なんです。