多様な候補商材を選別評価した過程が詳述されている。

 1. CD(音楽)

 音楽業界の流通が複雑で、著作権処理が煩雑。商品の点数が書籍より少ない。また、感情に影響されやすくブランド依存が強いため、書籍よりも「検索による購買」が起こりにくい。

 2. コンピュータ周辺機器

 商品点数が限られており、価格競争が激しい。また、技術進化が速く、在庫の陳腐化リスクが高い。

 3. ソフトウエア

 コピーや違法配布の問題があり、当時はダウンロード販売のインフラも未発達。

 4. ビデオ(VHS/DVD)

 当時はまだDVDが一般化しておらず、VHSはかさばる・壊れやすい・返品率が高い。さらに著作権やレンタル権の扱いも複雑。

 5. おもちゃ・ゲーム

 流行サイクルが短く、在庫の陳腐化が激しい。はやり廃りによる売上の変動リスクが大きく、安定経営には不向き。

 6. 家庭用品

 商品の種類は多いが、個々の商品あたりの利益率が低く、物流でのコストがかかる(割れ物が含まれ、大きさにバラつきがある)。

 7. 衣料品

 サイズ・色のバリエーションが多すぎ、返品率が非常に高い。在庫管理と顧客満足の両立が極めて困難。試着ニーズも強い。

 8. ガーデニング用品

 季節性が強く、需要の波が読みにくい。壊れやすい、重い、サイズが大きいなど、物流上の課題が多い。

 ベゾスはこのように、多くの候補を比較検討した上で、最終的に「本」に絞り込んだ。その理由は、本にはいくつもの優れた特性があったからだ。

 例えば、商品点数が数百万タイトルに及びロングテール戦略が生かせること、標準化(ISBN)で規格が統一されていること、顧客がタイトルや著者名で検索しやすいこと、在庫の長期保有が可能なこと(流行に左右されにくく、在庫が陳腐化しにくい)、今の流通の非効率を解消できること(リアル書店では扱えない膨大な品ぞろえを実現できる)、物流面のメリットがあること(本は形が一定で壊れにくく、配送が容易)、といった点である。

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