ロボットは実に複雑なシステムで、その性能は最大の弱点によって左右されるということだ。視覚サブシステムが直射日光の下で前にある物体を知覚できなければ、ロボットは窓から日光が入ってくると突如視力を失い、動作を停止するかもしれない。

ナビゲーションサブシステムが階段を認識しなければ、ロボットは転がり落ちて故障する(たまたま居合わせた人々にケガを負わせる)かもしれない。こうした例は挙げればきりがない。

人間のそばで生活し、仕事ができるロボットをつくるのは難しい。ものすごく難しいのだ。

数十年ものあいだ人々は、テーブル上のカップを掴む、ドアを開けるなどの単純なタスクをこなす多様な形式のロボットをプログラムしようと試みてきたが、結局大半のプログラムはきわめて不安定になり、条件をほんの少し変更したり、環境に変化があったりするとうまく作動しなかった。なぜか?(突然射し込んでくる日光のように)現実世界で起きることを何もかも予測するのは不可能だからだ。

しかも、人が暮らし、働くごちゃごちゃした乱雑な空間を動き回るといった難しいタスクには、まだ手をつけてさえいない。

こうしたことを慎重に考えれば、あらゆるものを固定し、位置をあらかじめ定め、適切で安定した照明を当てた環境に何から何までをしっかりと閉じ込めない限り、例えば青リンゴを掴んでキッチンテーブルの上にあるガラスボウルに入れるなどの単純作業も、解決がとんでもなく難しい問題になることがわかる。

だから工場のロボットは檻の中に入れられている。照明からものの配置に至るまですべてが予測可能で、人の頭を殴る心配をする必要がないからだ。

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