実は、サイズの違いによって、流体力学的な現象は、ずいぶん違ってくるのです。実は比較的最近になって、この違いこそがマルハナバチが飛ぶことを出来るようにしているということが分かってきました。
飛行機や鳥のような大きなものと、昆虫のような小さなものを取り巻く流体の性質を分けるものに、レイノルズ数と言うものがあります。同じ粘度をもった空気のなかを飛ぶのなら、サイズが大きくなるほどこの値が大きくなり、サイズが小さい、とこのサイズも小さくなります。
飛行機がほとんど粘性のない安定した流体のなかを飛んでいるのに対して、昆虫は渦の海のようなところを飛んでいるのです。
昆虫は三種類のお互いに関係しあった要素を利用して、重力に逆らう力を得ていることが分かりました。
一つ目の力は"delayed stall"と呼ばれるもので、この力は羽を上下にばたつかせているときに得られる力のことです。しかし、今まで知られていなかった、羽の動きの向きをかえるときに生じる2つの力を発見したのです。その2つの力は「回転循環(rotational circulation)」と 「後流捕獲(wake capture)」 と呼ばれています。
昆虫が羽をふって飛ぶ原理は、4つの段階に分けて考えるとよいでしょう。羽を振り上げたり振り下げたりする2つの段階(upstroke、downstroke)と、羽の動きの向きを反対へ回転させる2つ段階(pronation、supination)の合計4つの段階です。
「失速おくれ(delayed stall)」の力は、昆虫の体をもちあげる力として主要なものとなっています。これは、昆虫が羽を高い角度から、水平な位置よりも下の角度へ振り下ろしたときに生じる力です。ところが、もし飛行機の翼がこのような急な角度になってしまったら、当然飛行機は揚力を失います。しかし、昆虫の場合は、このときに羽の上の部分の圧力を下げ渦をつくることで、これが上向きの力へとなります。
また、羽の向きを変えるときに、バックスピンの空気の流れが生じ、これも昆虫をもちあげる力となります。このバックスピンの回転上昇は、例えばテニスボールやピンポン球のものと似ていますよね。これが"rotational circulation"の力です。
そして、問題の羽を振り上げるときに上向きの力としてはたらくのが、"wake capture"による力なのです。今まで作っていた上向きの回転の渦のエネルギーをつかんで、上向きの力を得るのです。
このように、翼の上下の空気の流れの速さの違いを利用した航空力学とはほとんど共通点を持っていないわけです。また、渦を利用するという発想は、作用反作用の第一法則からも思いつくことすら出来ません。
そのため、それまでの航空力学では、昆虫は「理論上」飛べないということになるわけです。
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