2016年、ミネソタ州のガレージセールで、ある油絵が50ドル足らずで購入された。持ち主は、それが失われていたゴッホの作品であり、何百万ドル(1500万ドルとの見積もりもある)もの価値があると言い始めた。絵は固く下手で、オランダの大画家フィンセント・ファン・ゴッホの作品を特徴づける情熱的なインパスト(絵の具を盛る塗り方)やリズミカルな筆遣いはない。もっと悪いことに、絵にはサインがある。「Elimar(エリマー)」だ。

アート界隈で「エリマー・ファン・ゴッホ」と嘲笑的に呼ばれるようになったこの絵を現在所有するのは、LMIインターナショナルと呼ばれるアート・コンサルタント集団だ。この集団は、望み通りの言葉を専門家から引き出すために多大な投資をしている。欲しいのは、本物のゴッホという一言だ。

著名なゴッホ専門家は誰ひとりとして公にこの絵がゴッホ作だとは認めていない。ゴッホの作品に関する最高権威と広く認められるアムステルダムのファン・ゴッホ美術館はこの絵を2度鑑定し、ゴッホではないと結論づけた。最初の鑑定は2019年、作風から判断してファン・ゴッホではあり得ないとした。今年1月、LMIが提出した分厚い報告書の追加情報を検分した後でも、美術館は改めて「フィンセント・ファン・ゴッホの作品ではないというわたしたちの見解は変わりません」と念を押した。

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