──なぜ日常会話を書いていたいと思うのでしょうか?
花田 多分なんですけど、日常がその人の一番の個性が出ると思うんですよ。例えば拳銃突きつけられればみんな怖いだろうし、ゴール前にボールがあがればシュート決めたいだろうし、恋をすれば相手と一緒にいたいって思うし、宇宙空間に飛び出せばその広さに感動する。それって大抵の人がみんなそうだと思うんです。でも、日常って人によって反応が千差万別じゃないですか。着飾ってないその人の本来の姿。寝起きだったり、今日何食べるかなあ、とか、うわ、牛乳買い忘れたー。とか。人間を見ている時に、そうやって暮らしている場面の方がその人のダメなところを考えられて、愛しく思えるんです。
昔、『やっぱり猫が好き』(1988-91)ってドラマがあって、幕張に住んでる三姉妹がマンションの一室で喋っているだけの内容だったんですけど、それで東京にゴジラみたいな怪獣が現れたって回があったんですよ。三姉妹はテレビのニュースでその様子をずっと見ているんですけど、怪獣がどこから来たかとか、どんな怪獣なのかとか、「逃げなきゃ」とかじゃなくて、テレビのテロップで〈京葉線運転取りやめ〉って出たのを見て「やったー会社休みだー」って喜ぶ。そのシーンを見て、自分が書きたいのは人間のこういうところだって思いました。だから怪獣が出てくる話でも『ゴジラ S.P〈シンギュラポイント〉』(2021)みたいな作品はひっくり返っても書けない。そこははっきりしてますね。
以前『けいおん!』(2009-10)という作品で各話ライターとして書かせてもらった時、原作が足りない、でも話を勝手に進めることもできないという状況で、特にキャラクターが成長するわけでもなく、大きな事件やイベントが起きるわけでもない、日常がただ過ぎていくみたいな話を沢山書く必要が出てきた。その時は、本当に楽しくて。学校の部室を掃除するだけで一話書くみたいなオーダーだったんですけど、自分からしたら願ったり叶ったりでしたね。時代がそういう方に段々と動いていたんでしょうね。合わせたというか自分の好みと時代が偶然合ったんだと思います。ラッキーでした。
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