──『宇宙よりも遠い場所』のPCを見る場面は、背後で見ている三人も含めて台詞ではなくほとんど状況だけで見せるシーンとなっていますが、あそこもト書きはあまり書いていないのですか。
花田 多少は書いていますが、監督のいしづか(あつこ)さんに以前、「花田さんがシナリオを書いていて、頭の中に情景が浮かんでいる時はト書きがなくても頭の中にコンテが浮かぶけれども、花田さんが浮かんでないまま書いている時は全く浮かびません」と言われたことがあって。ト書きがなくても、こっちがちゃんと場面を思い浮かべながら台詞を書くと、そこは演出家ですから、どんな場面か想像がつくんだなと。でも、こっちが画を思い浮かべないままお任せで単に台詞だけで書いてしまうと、言葉の羅列になってしまう。だから、ト書きをきっちり書くか書かないかではなく、頭の中できちんとそのシーンを画として思い浮かべて書いているかどうか、台詞が音として頭の中で響いているかが大事なのだなと思いました。
──報瀬が膝を抱えてブツブツ言い、それに茶々を入れるシーンなんかは、雰囲気を想像しないとああいったやり取りは出てこないですよね。
花田 ブツブツ言うシーンなんかは、あのテンポで書きたいから、ト書きを書かないということはありますね。間に情景描写が入ると、他人が読んだ時に、自分が伝えたいテンポにならない感じがするんです。だから、箱書きではないですが、速いテンポで書きたいときはどうしても台詞だけで書くということになって、もし必要な場合は後でト書きを流し入れるということになります。
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