「これは悪魔の音だ」とまで言った『TR-808』のキックのディケイ(減衰)を伸ばしたベース音は今やトラップやドリルをはじめ、ヒップホップやダンスミュージックにとって重要な音色となっている。この音が持つ平均55Hz前後の超低域のベース音は現在「サブベース」と呼ばれ、音楽制作における重要な部分だが、当時その帯域が鳴る機材は存在せず意識もされていなかった。
この超低音が世に出た秘密は当時の開発室のスピーカーにある。
「チープなスピーカーだったんです(笑)。音を鳴らすと揺れているのはわかるけど、(音程が低すぎて)聴こえない。あれは耳ではなく体で聴く音だったのかと最近理解しました」
「当時のスピーカーでは低音が出てるか出てないか、よくわからなかったんですよ。だから特にカットしなかった。それが後でよく働いたんです」