「一つ目は、私たちに生まれつき備わっている本能的な恐怖の記憶があるからです。進化心理学において、マーティン・セリグマンらが提唱した『準備された恐怖(Preparedness Theory)』という理論があります。
これは、人間が過去の生存競争の中で、大型の捕食動物といった特定の刺激に対して、遺伝的に恐怖を感じるようプログラミングされているというものです」
つまり、クマの出没は、祖先が大型捕食者に襲われたかもしれない記憶を、生存本能レベルで呼び覚ましているというのだ。
「そして二つ目が、私たちに過剰なリスク認知が発生しているからです。認知心理学の分野に『可用性ヒューリスティック(Availability Heuristic)』という理論があります。
これは、人はニュースなどで鮮明に報道され、記憶に残りやすい情報を、実際のリスクの大きさよりも高確率で発生すると過大評価しがちである、という理論です」