北京に行ったら、誰もが必ず一度は行く故宮博物院。1406年、明朝の永楽帝が建設をした壮大な宮殿「紫禁城」だ。それ以来、500年の間、宮殿として使われ、築600年になりながら保存状態はよく、世界最大の保存状態のよい木造建築群としてユネスコ世界遺産にも登録されている。
故宮の屋根には鳥が寄ってこず、糞を落とさない。そのため、屋根に雑草が生えることがない。さらに、近代以前の大規模木造建築の火災原因で多いのが落雷だが、故宮の屋根には落雷もない。
一般的な民家の屋根は、雨水を流し、同時に風による影響を受けないように20度から30度に設計してある。しかし、故宮の屋根は60度から70度と傾斜が急になっている。
一般に、傾斜角が55度を超えると鳥類は足元が安定しなくなり、そこにとどまることはなくなる。これにより、鳥がとどまったり、巣をつくることがなくなる。
故宮の屋根には瑠璃瓦が使われている。これは特殊な釉薬を使い、金色にしたものだ。この釉薬は二酸化ケイ素と金属酸化物が含まれており、日光をよく反射する。その反射率は85%にもなり、現代のガラスが60%程度なので、鳥にとっては警戒をするほど輝くことになる。
一般的な屋根瓦には、空中を飛んできた土が堆積をし、そこに雑草が生え始める。すると虫が発生し、そこに鳥がやってくるという小さな生態系が生まれる。しかし、故宮の屋根には雑草が生えない。
瓦と瓦の間には、モルタル状の充填材が詰め込まれ、瓦を安定させている。この充填材は、もち米の研ぎ汁、羊桃藤の汁、石灰でできている。この充填材の硬度はセメントに匹敵をし、強アルカリ性を示す。最近の研究によると、この充填材環境では、99%の種子が3日以内に生命反応を失うという。生き延びることができるのは、コケ類だけだそうだ。
もし気に入ったら購読料お願いします