綾奈 そうですね。CRYCHICの解散が大きな鍵になっていますが、そこから話がスタートすると、いきなりヘビーな展開で説明することも多く、見る方のハードルが高くなってしまうと思ったんです。なので、まっさらな状態から燈たちに出会う人が必要で、愛音を語り部にしました。また、燈の視点だと、彼女自身の人となりが第三者に伝わりにくいなとも思ったんです。
引用ジャングルは同名のTumblrページからインポートしています
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綾奈 今回、キャラクターの関係性と感情から物語を作っていったんです。こだわらなきゃいけないのはそこだなと。相関図を作って、元CRYCHICメンバーがお互いをどう思っているか、他の子たちはどう絡んでくるのかを考えました。立希(たき)が生まれたのも、作詞の天才である燈のことを「すごい」と思ってくれる人がいてほしいからでした。
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綾奈 CRYCHIC解散を起点に2バンドに分かれていく、そのMyGO!!!!!サイドのお話ですね。MyGO!!!!!とAve Mujica(アヴェムジカ)をつなぐ存在としてCRYCHICが必要でした。
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綾奈 なぜ愛音と祥子が対比関係に見えるか考えると……私は日陰にいる子を陽のあたる場所に連れ出してくれる女の子が好きなんです。その連れ出す役を、中学時代は祥子、高校時代は愛音にやってもらっているから2人が重なって見えるんでしょうね。
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綾奈 最終的なジャッジは監督なので全部とはいきませんが。「It’s MyGO!!!!!」のコンテを見て驚いたことといえば、例えば、そよちゃんに裏があることが第2話でもう判明してしまうところですね。脚本段階では、「序盤は隠そう」って監督の方針だったので。
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武田 けっこうニュアンスのズレが生まれるんですよね。「ユーフォ」だと当時の部長である晴香に自分のいいところを聞かれた久美子が「優しいところ」と繰り返したせいで、「優しいなんてほかにほめるところがない人に言うセリフでしょ」と言い返されるシーンがあるんですが、私は最初は軽めのトーンで最後にバシッと決めるつもりで書いていたんです。でもアニメではずっとシリアスになっていて(笑)。「私の感覚がズレてるんだな」と反省することはよくあります。
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綾奈 アニメの脚本でも、ここ数年はそういうものが求められてて。セリフだけでなく、どんな表情や感情で言っているかまでなるべく書いています。受け取る側と齟齬が生じないように。
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武田 そうですね。今は「花は咲く、修羅の如く」というマンガの原作をやっていて脚本を毎月作っているんですけど、そこで編集さんに「表情を指定してください」と言われて最初は「どういうことだろう?」って感じたんです。細かい表情って本を書いているときには考えたことがなかったのですが、絵にするときは確定させなくちゃいけないんですよね。だからト書きに加えて、セリフのあとに「(怒)」とか「(曖昧な笑み)」とか感情を表す言葉を入れています。小説だとそんな感情の指定の仕方は最悪ですけど(笑)。
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私が「バンドリ!」第1期でこだわったのは、劇中の彼女たちの間だけで成立するような生々しい会話なんです。それを「すごくいい」と言ってくださった方もいたけど、「わからない」という方もいて。私は後者の感想が目について、「『バンドリ!』はたくさんの人に届けないといけない作品だった」とすごく反省したんです。なので第2期、3期のときは広く届けられるものにしようと自分のエゴを抑えていました。でも「It’s MyGO!!!!!」はそこで得た、人に届けるための作法を使って自分が書きたいものを書いているので、ある種の原点回帰なんです。
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「重めのドラマをやりたい」と(ブシロードの)根本雄貴プロデューサーに依頼されたので、シリアスをやるつもりではありました。せっかく0から作れるのならと、私が当時プライベートで経験した裏切りや人間不信の時期に覚えた感情を、バンドというフィルターを通して表現しようと思って。それが(高松)燈ちゃんの「一生、バンドしてくれる?」という第1話のセリフにつながるんですけど。
ただ、どこまでシリアスにしていいかは迷いました。そんなときに、柿本広大監督から、もっと振り切る方針が出たので、「本当に大丈夫?」なんて思いながらもどんどん突き進んで。それでも第9話の脚本が形になったときはみんながバラバラになり過ぎて、「これ、本当にバンドになるのかな?」という思いもあって。もちろん先にざっくりとした流れは作ってあるんですけど……。